ファンダメンタルズ分析

株を買いたいけど、どうやって株式を分析すればいいのか見当もつかない…。

今回はそんな悩みを抱えている方のために、株の分析の王道であるファンダメンタルズ分析について詳しく紹介していきます。

これを読めば、株式投資分析の最初の一歩を踏み出せますよ。

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析

株の分析方法は、大きく分けて2つあります。

ひとつはテクニカル分析(いわゆるチャート分析など)で、もうひとつがファンダメンタルズ分析です。

ざっくり言うと、株価の値動きで分析するのがテクニカル分析、企業の本質(財務状況など)をもとに株価が高いのか安いのかを分析するのがファンダメンタルズ分析です。

今回は企業の基本的な数値を用いて株を分析する、ファンダメンタルズ分析について詳しく解説していきます。

ファンダメンタルズ分析=決算書の分析

ファンダメンタルズ分析に使用する基本的な数値は、すべて決算書(有価証券報告書)に書いてあります。要するに、ファンダメンタルズ分析とは、決算書を分析するということもできます。

決算書と聞くと、なんだか難しそうに思う人もいるでしょう。しかし、実際にはそれほど複雑なことは書かれていません。例えるなら、決算書は家計簿みたいなものです。

家計簿には、毎月いくら給料が入ってきて、いくら生活費に使って、いくらローンを支払うかなどが書かれていますね。

それと同じように、企業の決算書には、どれだけ売上があって、どれだけ経費を使って、どれだけ利益があって、どれだけの資産があって、どれだけの借金があるのかなどが書かれています。要するに、会社の家計簿が決算書となります。

決算書はネットで誰でも無料で見ることができます。(EDINETで検索 http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/ )

そのため、いくら企業が儲かっているふりをしていても、決算書にはすべて数字が書いてあるため見破ることができます。だから決算書を読むこと=ファンダメンタルズ分析をすることは大切なのです。

損益計算書と貸借対照表

決算書には賃借対照表と損益計算書が掲載されています。2つとも重要な株の分析材料になります。

まずは、賃借対照表から詳しく説明していきます。

貸借対照表(B/S)

賃借対照表には、企業がいくら借りていて、いくら貸しているのか?何を持っているのか?がすべて書いてあります。

個人で言うところの、いくら借金していて、車や家を持っていて…などの情報が書いてあると考えてください。

賃借対照表はバランスシート(Balance Sheet)とも呼ばれ、頭文字を取ってB/Sとも言われます。

賃借対照表は、下記のような表記で企業の情報が書かれています。

貸借対照表(B/S)

左側の資産の部には、その企業が何を持っているのか?どんな資産があるのか?書かれています。

この資産の部を見れば、企業が保有している現預金や不動産、在庫や原材料、何らかの権利などがわかります。

右側の負債の部は、左側に書かれた「資産を手に入れるために使ったお金は、どこからやってきたのか?」を示すものです。

銀行から借りたお金や、自分のお金が書かれています。負債は借りてきたお金で、純資産は自分で調達したお金(要するに純資産=自己資本)です。

このように賃借対照表を見れば、企業の財務状況が一目でわかります。

次に、貸借対照表から株式投資の際に見ておきたい部分をいくつか見ていきましょう。

株式投資の際に見ておきたい部分

自己資本比率

会社が事業に必要な機械や土地などを購入するために使ったお金で、自分で調達した分(自己資本)が、何%ぐらいなのか?負債と純資産の割合でわかります。

負債+純資産が総資本となり、総資本に占める自分で調達したお金の割合が、自己資本比率です。(自己資本比率何%と表す)

自己資本比率=自己資本÷総資本

例えば、銀行から300万円を借りて、自分で700万円を調達(自己資本)した場合、合計で1,000万円(総資本)を持っていることになります。この場合の自己資本比率は、70%になります。

700万円(自己資本)/1,000万円(総資本)=70%(自己資本比率)

上記の計算でわかるように、自己資本比率は借金が多ければ多いほど小さくなります。

自己資本比率を調べれば、企業の懐事情がわかるため、投資をする際のひとつの判断材料になります。

負債は少ないほうがいい?

負債が多いと返済も多くなるし、利子も増えます。せっかく利益が出ても返済が多ければ、手元に残るお金は大幅に減少します。そのため、できるだけ借金(負債の比率)は少ないほうがいいです。

ただ、借金がある企業がダメというわけではありません。個人と違い、法人は借金をするのが一般的です。

個人の家計では使ったお金が増えることは基本的にあまりないかもしれませんが、法人の場合は設備投資にお金を使って生産性を高めたり、人を雇って業務を拡大したり、新たな店舗を出店したりと、お金を使ってより多くのお金を稼ぐために借金をするのが一般的です。

成長スピードを高めるためにどんどん借り入れをしている企業に投資したほうが、急成長して株価が大きく上がるなどリターンが大きい場合もあることを覚えておきましょう。

純資産

仮に企業が倒産してしまった場合に、最後に残るお金が純資産です。

そのため、純資産は企業の一つの価値として考えることができ、数字が明確なため他の企業と比較をすることもできます。

例えば、もし企業が倒産した場合、資産の部(賃借対照表の左側)に書いてある、あらゆる資産を売却して、債権者に借金を返済します。

負債の部(賃借対照表の右側)にある負債がすべてなくなれば、残りは純資産になりますよね。(負債の部=負債+純資産)だから純資産は、企業価値を測るものとして信憑性があるのです。

2つの企業の資産の部が全く同じだったとしても、ほとんど借金をしていない自己資本比率80%の会社と、借金まみれの自己資本比率20%の会社では、潜在的な価値が全く違うことを覚えておきましょう。

BPS(一株当たり純資産)

BPS(一株当たり純資産)は純資産をベースにした指標です。

何かを判断するときに基準となる数値のことを、一般的には指標といいます。これから紹介するBPSも、企業価値を判断するための指標のひとつです。

BPS=一株当たり純資産

BPSとは、一株当たり純資産です。一株当たり純資産とは何なのか?というと、この「一株当たり」とついているのがポイントになります。

先程紹介したように企業が倒産した場合、資産をすべて売却して、借金を返済することになります。その後、残るのが純資産でしたね。

仮に、この残ったお金をすべての株主に平等に分配した場合、一株当たりいくら手元にお金が残るか?それが一株当たり純資産(BPS)です。

BPSと聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、一株当たりという名前の通り、単純に企業の純資産を発行株式数で割っただけです。

難しそうな用語もわかってしまえば簡単ですね。

BPS=純資産/発行株式数

BPSは株の定価として考えられる

会社が解散した場合に、手元に残る資産の一株あたりの値段がBPSなら、このBPSは株の定価と考えることもできます。

この定価(BPS)を基準に、実際の株価がどうなっているのか見ていきましょう。

例えば、ある企業の純資産が5,000憶円、発行株式数は9,000万株だとします。この時、BPSは5,500円になります。

5,000憶円(純資産)/9,000万株(発行株式数)=5,500円(BPS)

しかし、今の株価は、1株20,000円で取引されているとします。株の定価として考えられるBPSの価格と大きく異なりますね。定価が5,500円だとわかっていれば、現在の株価は高いと、ひとつの判断材料になります。

このように一株当たりの資産価格と、実際に市場で取引されている株価が違うことは、株式投資の重要なポイントであり、面白いところでもあります。

PBR

BPSと株価の関係を表す指標をPBRといいます。PBRは下記の式で計算することができます。

PBR=株価/BPS(定価)

先ほどの例の企業の場合は下記になります。

PBR3.6倍=株価20,000円/5,500円

すでにお分かりの通り、PBRは株価が定価(BPS)に対して、何倍で取引されているかを知るための指標です。

先ほどの企業の場合だと、市場では定価の3.6倍で取引されていることになります。

株価を見ただけでは高いか安いかわかりません。しかし、BPSで定価を確認して、何倍で取引されているのかをPBRで知れば、株価の価格水準を把握することができます。

株式投資をする際には、この2つの指標は非常に重要になってきます。

PBRが1倍以下になることもある

PBR=0.8倍のように、PBRが1倍を下回る株もあります。これは定価より安く取引されていることを意味します。

この株を買えば儲かりそうに思えますが、それほど株式投資は単純ではありません。

安く取引されているのには、それなりの理由があるものです。PBR1倍以下のものに投資すれば、絶対に儲かるわけではないことを覚えておきましょう。

株を分析する指標は、BPSやPBRだけではありません。これら以外にも多くの指標があり、総合的に判断しなければ、株で利益を出すことは難しいです。

損益決算書から導き出されるEPSとPER

決算書には賃借対照表と損益決算書がありましたね。BPSやPBRは、賃借対照表を使って導いた指標でした。

これらと同じように、損益決算書から導き出せる指標もあります。例えばEPSとPERです。

損益決算書は、賃借対照表よりシンプルです。

売上からすべての経費を差し引いて、残ったお金が純利益になります。この詳細が書かれているのが損益決算書です。

EPS=一株当たり純利益

企業が稼いだ1年間の純利益を株主に平等に分配したら、一株当たりどれぐらいの利益が貰えるか?これがEPS(一株当たり純利益)になります。

EPS=純利益/発行株式数

このように損益決算書の純利益を株式総数で割れば、EPS(一株当たり純利益)を求めることができます。

ただ、これは仮の話です。一般的には企業が稼いだすべての利益を、実際に分配することはありません。企業の利益がなくなってしまいますから当然ですね。BPS(一株当たり純資産)を計算する際に、倒産を仮定したのと同じことです。

PER=株価/EPS

PERとは、現在の価格で株を購入すると、仮に毎年EPSを受け取れると考えた場合、投資した資金をすべて回収するには、何年株を保有しなければいけないかがわかる指標です。下記の式で求めることができます。

PER=株価/EPS

PER10倍なら、投資資金をEPSで回収するのに10年かかることになります。そのため、PERは数値が低ければ低いほど、企業が稼いだ利益に対して株価が割安になります。

PERは企業が稼いだ純利益を元に算出する指標です。企業が持っている資産を元に算出するPBRとは、全く性質が異なることを覚えておきましょう。

まとめ:表面的な投資による失敗を防ぐためのファンダメンタルズ分析

売上を上げて、利益を出して、純資産を増やして、株価を上げる。これが企業活動の一連の流れです。それがうまくいっている企業は、BPSやEPSが自然と高くなります。

それに対して、市場がどのような価値をつけているかが株価であり、PBRやPERなどの指標を参考にして、現在の株価水準を判断することをファンダメンタルズ分析といいます。

株式投資をするなら、これらの指標は無視できません。

株式投資を始めたばかりの初心者は、誰もが聞いたことのある有名企業やCMで露出している企業、株主優待を出している企業など、表面的なことだけで投資判断して失敗しがちです。

そうならないためにも、決算書の数字を使って、しっかりファンダメンタルズ分析をしましょう。

また、いくら良い株を見つけても、買うタイミングが悪ければなかなか売買での利益は出せません。資金を効率よく使おうと思ったら買うタイミングも大事です。

そこで、ファンダメンタルズ分析と合わせて重要なのが、テクニカル分析、つまり株価の値動きで判断する分析方法です。

テクニカル分析も大事:株価チャートを分析しよう

ここまでで株の買い方はわかってきたと思いますが、株で利益を上げるためには「安く買って高く売る」こと、つまり買うタイミングや売るタイミングが大事です。

株価の値動きの流れを見るうえでは、チャートを見ることはかかせません。次のカテゴリでは基本的な株価チャートの見かたや意味も知っておきましょう。

ファンダメンタルズ分析で企業の本質を見て、テクニカル分析で売買のタイミングも分かればより速く、より高い確率で利益を上げる可能性が高まります。

そこで、次のカテゴリ「株価チャートの見かた」では、テクニカル分析の基本である株価チャートの見かたを解説しています。

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