資金を効率よく使う「信用取引」のやり方

株式投資では、通常の現物取引のほかに信用取引というものがあります。この信用取引では、証券会社に預けた資金の約3倍の金額の取引ができ、資金を効率よく使うことができます。

例えば30万円の資金しかなくても、買うのに50万円・70万円といったより大きな資金が必要な株を購入することができるので、取引できる銘柄の幅は大きく広がります。

また、信用取引口座では「売り」から取引を始める「空売り」も使うことができます。空売りを使えば株価が下がるときにも利益を出せるので、空売りをしたいから信用取引口座を開設するという方も多いです。

参考:空売りのやり方

ここでは信用取引について詳しく解説していきます。

マネックス証券

2022年7月追記:米国株の信用取引もできるようになりました。

信用取引のメリット

レバレッジ取引で大きな資金を動かせる

信用取引のメリットは、何と言っても今まで取引のできなかった金額の大きな株の売買ができるようになることです。

仮に資金が30万円しかなくても、その資金を保証金として約100万円の取引ができます。70万円・80万円の資金が必要な株を買うこともできるし、20万円の株を2株、3株と買い増し、値上がり時の利益を2倍、3倍と増やすこともできます。

いわゆるレバレッジ取引ですね。とはいっても、株の信用取引の場合はFXのような何十倍という大きなレバレッジがかけられるわけではありません。株の信用取引はレバレッジは約3.3倍。30万円の資金で100万円の取引ができます。

これはSBI証券でも野村證券でもどこの証券会社でも同じです。株の場合はFXのように業者によってレバレッジ率が違うわけではありません。

空売り(カラ売り)ができる

空売りによって、相場が下げている時でも利益を得ることができます。

空売りが使えることによって、ツナギ売りができたり、現物で保有している株を空売りすることで、株を持ったまま株価下落リスクを抑えることができます。(長期保有株主優待がある銘柄や、株主番号が変わってほしく無い場合に使えます。※詳しくは空売りのページ参照)

1日に何度も同じ銘柄を売買できる

信用取引では、同じ銘柄を同じ日に何度も取引することができます。

  1. 例えば銘柄Aを買って
  2. その日のうちに売って
  3. 売った資金でまた同じ銘柄Aを買う

これは、現物取引の場合は、差金決済(さきんけっさい)という”禁止された取引”に該当する可能性があるためできません。

しかし、信用取引の場合は保証金の与信枠の範囲内で同じ銘柄を同じ日に売買することが可能です。

手数料は現物取引より安い

信用取引は通常の現物株取引よりも手数料が安い場合が多く、SMBC日興証券のようにオンライントレードなら信用取引の取引手数料が無料と言うサービスを行っている証券会社もあります。

信用取引では金利や貸株料など、現物取引にはない費用が発生することもありますが、それでも現物に比べると手数料が安い証券会社が多いです。

この3つ、大きな資金を動かせること、空売りができること、そして手数料が安いことが信用取引の大きなメリットです。

信用取引のリスクやデメリット

用意した資金以上の損失が発生する可能性

大きな金額での取引をすると、その分損失も大きくなります。現物で取引をしていれば、自己資金以上のマイナスにはならないので、最悪でも自己資金が0になって終わりです。

ところが信用取引の場合は自分の資金以上の大きな取引ができるため、30万円の資金しかなくても、50万円、60万円といった大きな損失が出る可能性もあります。

この場合、損失額から自己資金30万円を引いた残りの金額は株の取引口座とは別のところから用意して返済しなければいけません。

余裕資金が他にあればいいですが、将来のために貯めておいた大事な資金に手を出したり、最悪の場合借金をして返済をしなければなりません。

空売りのリスクは無限

信用取引では空売りが使えます。通常の買いでの取引の場合、株価がゼロ以下になることはないので、最悪の場合でも買った金額以上のリスクはありません。

しかし空売りは株価が上がると損失になります。株価の上昇には上限はないので、もし空売りした銘柄が急騰して株価が何倍にもなった場合、大きな損失を抱えてしまうことになります。

金利などがかかるので長期保有には向かない

信用取引で買ったり空売りした株には、取引手数料のほかに金利や逆日歩などのコストがかかります。

制度信用か一般信用か、買いか売りかで金利が違います。年利1%〜3%程度が多く、証券会社によってそれぞれ違い、時期によって変わるので、手持ち資金より大きな金額の株が買えるからといっても長期保有や配当金狙いの場合は信用取引はあまり向いていません

ただし、金利や貸株料などは、年利1%だとすれば1年で1%ということです。1ヶ月なら0.1%未満、3日なら0.01%未満なので、金利や貸株料は短期であればそこまで大きくはありません。

また、売り建てのときにかかることがある「逆日歩」に関しては発生した場合は高額になる場合もあるので注意して下さい。

信用取引の金利や貸株料は各社がそれぞれで定めているので、取引する証券会社で確認してください。

信用取引で失敗すると借金ができてしまうの?

信用取引は恐いというイメージを持っている人もいて、借金を抱えることになるというイメージを持っている人もいますが、もちろん可能性としてゼロではないですが、基本的には借金になるのはよほどハイリスクな取引をしていてかつ運が悪いケースです。

信用取引では追証(おいしょう・追加証拠金)といって、ある程度まで含み損が出たらゼロになる前に強制的にポジションが決済されてしまいます

例えば信用取引で100万円の取引をするには30万円の手持ち資金が必要です。しかし、株価が下がり90万円になってしまったとき、損失は10万円あるので、手持ち資金は実質20万円となり、足りなくなってしまいます。

そうなると、追加の資金(追証)を入れないとポジションは強制的に決済されてしまいます。ようは信用取引で買っていた銘柄は売られてしまい、空売りしていた銘柄は買い戻されてしまいます。

最低保証金率の30万円、そして追証ライン(委託保証金最低維持率)の20%、このいずれかを下回ると強制決済されてしまいます。

だから、信用取引を使ったからって借金ができてしまうということは基本的にはありません。

「追証は恐い」なんて言われたりしますが、実は追証は損が大きくなりすぎないための投資家を守るための制度なんですね。

ただ、ポジションが決済できない場合はその限りではありません。

例えば30万円の資金で、信用取引で限界の100万円分近く1つの銘柄を買っていて、その企業がいきなり倒産、ストップ安で売ることができないまま株価が10分の1になってしまった・・・なんて場合は、100万円のポジションが10万円まで下がってしまったので90万円の損失です。

しかし、資金は30万円しかないため、残り60万円を返済しなければいけなくなります。

信用取引で大きな買いポジションを持った企業がストップ安で売れない状態が続くケースですね。

別のケースとしては、空売りした銘柄の株価が暴騰、ストップ高の連続で買い戻すことができないまま株価が何倍にもなってしまったなんて場合は、その暴騰した株価で買い戻さなければいけなくなります。

いずれも信用取引でハイリスクな取引をしていた場合です。

「暴騰の可能性がある銘柄を空売り」したり(普通は空売りできない銘柄に指定されていることが多いです)、「1つのポジションに資金を集中」してしまったりといったハイリスクな取引をしていること、そこに、運悪くストップ高やストップ安の連続など「決済できない状況」が重なってしまったケースですね。

そのため、よほどハイリスクな取引をしなければ、そしてそこに運悪い状況が重ならなければ、基本的には借金になることはありませんが、「そういう可能性も無いわけではない」「大きなリスクをとることもできてしまう」ということは覚えておきましょう。

リスク管理ができれば信用取引は怖くない

信用取引は30万円くらいの資金で100万円くらいの取引ができます。実際の手持ち資金よりも大きい金額の取引ができるので、その分リスクが大きいと感じるかもしれません。

しかし、自分のリスク管理次第で大きなリスクは避けることができます。

大きい金額の取引が「できる」だけで、「しなければいけない」わけではありません。30万円の資金で100万円の余力があったとしても、30万円以内の取引しかしなければリスクは同じですね。

しかし、それでは空売りができる以外のメリットがありません。(空売りができるということ自体が大きなメリットではありますが)。

そこで、リスクを抑えた信用取引の使い方の3つの事例を見てみましょう。

1.チャンスのときに取引額を増やす

たとえば普段は資金の範囲内で取引し、ここぞ!というチャンスのときに取引額を増やしていつもよりちょっと大きな取引をしてみる、という方法です。

例えば資金が30万円なら、普段は30万円以内の取引にとどめておき、ここぞというチャンスが来たら一時的に信用余力を使って取引量を増やしてみる、そしてまた普段は30万円以内の取引に戻す、という使い方です。

暴落していろんな銘柄が安く買えるときとか、たまにありますよね。

2.手持ち資金では「ちょっと足りない」銘柄を購入する

また、手持ち資金では「ちょっと足りない」という銘柄を購入するときにも活用できます。「あの銘柄買いたいけどちょっとだけ資金が足りない」「あと3万円でもう一つ銘柄が買えるんだけどな」ということはよくありますよね。

例えば「手持ち資金は30万円だけど40万円の銘柄を買いたい」というようなときですね。

手持ち資金よりちょっとだけ多くしか余力を使わないので、比較的小さなリスクで信用取引のメリットが活用できます。

3.現金を手元に残したまま株取引をする

また、資金はあるんだけど「全部株の口座に入れておくのはちょっと・・・他でも使うかもしれないし現金も持っておきたい」というとき。

たとえば「資金が100万円あるけど、全部証券口座に入れずに銀行の貯金でも残しておきたい」というときなど、資金の一部だけ信用取引口座に入れておけば、資金を拘束されずに株取引にまわせますね。

このように、信用取引には大きなメリットがあります。「レバレッジ3倍を限界まで使う」というハイリスクハイリターンな使い方ではなく

というように、信用取引は使い方によって大きなリスクにもなりますが、使い方によってはリスクを抑えたまま便利に使うことができます。

最低いくらの資金が必要なの?

信用取引をするには、最低委託保証金といって、最低30万円の資金が必要です。

また、委託保証金率は30%、つまり取引したい金額の30%分の資金があればその金額の信用取引ができます。

例えば1000万円の取引をしたいならその30%、300万円の資金が必要ということです。

また、委託保証金最低維持率(追証ライン)があります。委託保証金の維持率が20%未満となった場合、不足額を所定の時限までに差し入れるか、建玉を決済する必要があります。

信用取引をするならこの3つは覚えておきましょう。

ようするに、30万円以上あれば約3.3倍の信用取引ができて、含み損が出て保証金率が最低維持率を下回ったら追証(資金の追加)をしないとポジションが強制的に決済されてしまいますよ、ということです。

信用取引の口座開設のやり方

信用取引の口座開設には、まず通常の取引口座(証券総合口座)の口座開設が必要です。

口座を持っていない証券会社でいきなり信用取引口座から作るということはできないので、まずは通常の口座(証券総合口座)の口座開設をします。

参考:口座開設の手順はこちら

証券総合口座の口座開設が完了したら、管理画面からログインして信用取引口座の開設の申し込みをします。

信用取引の口座開設には審査があります

信用取引口座の口座開設の申し込み時にいくつか質問事項があり、信用取引の内容やリスクについて理解していない場合は口座開設ができません。

また、信用取引はレバレッジが効く分より大きなリスクも取ることができるため、投資歴がゼロの初心者の人は口座開設ができない場合があります。

信用取引口座開設の前に

「株で借金を作った」というような話を聞きますが、現物取引をしている限りは借金ができるほどの損失はあり得ません。(借金で株をすれば別ですが・・・)

借金ができる場合というのは、信用取引で自分の資金以上の大きな取引をして損失を出した時や、空売りしていた銘柄が暴騰した時です。

通常は含み損が大きくなって信用余力が足りなくなれば強制的に決済されてしまうので、借金ということはほとんど無いので大丈夫ですが、ストップ高で売れないことが続いたりするとそういう可能性もあるということです。

信用取引口座開設の前に、大きな額を動かせる分、リスクも大きくなる事を充分理解したうえで検討して下さい。不安な方はページ最後のほうで紹介する低リスクで始める「スタート信用」を検討してみるとよいかもしれませんね。

信用取引口座開設には経験が必要

信用取引は、上記のようなリスクがあるため、株の取引経験が浅い初心者は口座開設ができません。通常は口座開設時に「1年以上の株の取引経験があるか」を書く欄があります。

自己申告なので初心者でも「ある」にチェックしてしまえば確認のしようがない(他社で取引経験があると言ってしまえばそれまでなので)ようですが、充分経験を積んでから利用するようにして下さい。

信用取引の取引手数料は現物取引より安い

信用取引の取引手数料は現物取引の手数料と異なります。

基本的には信用取引の手数料のほうが現物取引より安いことが多いです。

2017年の年末頃からマネックス証券をはじめ、いくつかの証券会社で信用取引の手数料が改定されましたが、現物と比べると取引手数料はかなり安いことが多いです。

SMBC日興証券のダイレクトコースに限っては信用取引の手数料が無料になっています。

各証券会社の信用取引の手数料の比較は信用取引の手数料比較のページを参考にしてください。

信用取引は危険? ・・・って言われるけど

信用取引に関しては実際に自分が証券会社に預けてある資金の約3倍の金額までの取引ができるため「信用取引は危険だ」という意見もあります。

これは自分の持っている資金の約3倍の金額まで取引ができるため、取引ができる金額の限界まで買ってもし仮にその企業が倒産してしまった場合、自分の資金以上の負債となり、借金を背負ってしまうことにもなりかねないというリスクを含んでいるからです。

しかし、自分自身で「預けてある資金以上の取引はしない」とルールを決め、そのルールを守れば借金を負ってしまうようなことはありません。

また、逆指値ツイン指値などの注文方法をうまく使いリスク管理をしっかりすることでそもそも大きな損失を出すリスクを減らすこともできます。

要は空売りや信用取引も包丁などと同じで「便利な道具」になるか「危険な道具」になるかは「その人の使い方次第」ということです。

怖がっていては空売りや資金効率の良さなどの「便利さ」を手に入れることはできませんが、かといって自分を制御する自信がないのであれば、信用取引には手を出すべきではないでしょう。

このあたりはあなた自身のレベルに合わせてやるかどうかを決めましょう。

これらのリスクを抑えて信用取引をスタートするために、マネックス証券のスタート信用というリスク管理をしやすくするサービスパッケージもあります。

信用取引を低リスクで始められる「スタート信用」

「信用取引を始めてみたい、でもちょっと不安・・・」という方は、マネックス証券の「スタート信用」から始めてみるというのもアリです。

信用取引を始めるときに心配なことトップ3」として挙げられているのが

の3つでした。そこでマネックス証券では

という条件で信用取引を始められる「スタート信用」というサービスパッケージを提供しています。

買い建てのみなので空売りはできませんが、手持ちの資金よりも大きな金額の銘柄が買えるというメリットはそのままに、上限500万円なのでたくさん買いすぎて大きなリスクを負ってしまうという心配を抑えることができます。

信用取引に興味はあるけど不安というかたは、スタート信用で慣れてから普通の信用取引に進むというのがいいかもしれませんね。

もちろんスタート信用ではなく、空売りもできる通常の信用取引口座で大きく取引せず少額で取引してリスクを小さくするということもできます。このあたりは自分で自分をコントロールできるかどうかで判断するといいかもしれませんね。

 

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